※スタリオンの名前をクリックするとレポートが表示されます。

ザール
アルカセット
ルールオブロー
ファンタスティックライト
ストーミングホーム
アドマイヤムーン
コマンズ
パイロ
ディープスカイ







ザール
(ミスタープロスペクター系:父ザフォニック×母モンロー/母父サーアイヴァー)


 スタリオンパレードの先鋒は黒鹿毛のザール。他にはストーミングホームもいるが、鹿毛の多いダーレーではなかなか珍しい。
 ヨーロッパに残してきた産駒ではバルサザールズギフトらが重賞勝ち。欧州2歳チャンピオンの座に就いたスピード狂の血は産駒にも確実に継承されている。



 仕上がりの早さと圧倒的なスピード、そして血統背景が売り。
 伯母セックスアピールの子に種牡馬のトライマイベスト、孫にフサイチパンドラ。 同じく伯母にあたるブラッシュウィズプライドの孫にジャジル、ラグズトゥリッチズ、カジノドライヴきょうだいがいる。
 ザフォニックは日本ではマイナーだが、この牝系の良さを生かして日本でも順応できる子を出したいところ。

 

実はダーレージャパンのスタリオンでは最年長の15歳。もっと若者だと思っていた。ダーレーの種牡馬はずいぶん若々しく見える印象だ。







アルカセット
(ミスタープロスペクター系:父キングマンボ×母チェサプラナ/母父ニニスキ)


 ジャパンカップでハーツクライと死闘を演じた東京2400mのレコードホルダー。
 既にデビューしている産駒は父の晩成型を見事に受け継いでいる。日本ではある程度仕上がりの早さを問われるので苦戦、と思われがちだが、古馬以降の活躍に期待したい。



 終始大暴れしていたアルカセット。どうやらプレスが陣取る前を通ると異常に興奮。大量のカメラに驚いたのか、「俺を撮ってくれー」とはしゃいでいたのか。

 

ほとんどの写真が尻っぱねしていて、まともに使えなかった…。











ルールオブロー
(ミスタープロスペクター系:父キングマンボ×母クリスタルクロッシング/母父ロイヤルアカデミーII)


 アルカセットと同じくキングマンボ産駒。しかし、晩成型のアルカセットに比べ、早くから活躍し、イギリス・ダービー2着、セントレジャー優勝など輝かしい成績を残す。
 キングマンボ系種牡馬は晩成型とされることが多いが、現在大ブレイクしているキングカメハメハのような仕上がりの早さを見せるのではないかと期待されている。 1400m~2900mのレースで勝利という距離の万能さ、なおかつ仕上がりが早かった自身の性質がうまく産駒に伝われば、クラシックの舞台での期待は高まる。

 


 導入された年から「実際に現地で馬体を確認した」生産者からの評判が高い。実は昨年度はダーレージャパンでは2番目に多い127頭の牝馬と交配している。 これだけの馬の種付料が100万円というのは破格なように思えるが…産駒デビュー後には種付料があがりそうな予感のする一頭。







ファンタスティックライト
(ブラッシンググルーム系:父ラーイ×母ジュード/母父ニジンスキー)


 世界を股にかけた欧州最強馬。2000・01年ワールドレーシング・チャンピオンシップ優勝、01年カルティエ賞、エクリプス賞受賞という輝かしい成績の名馬が登場。




 秋の初対面でとても印象に残った独特の顔立ちは当然のことだがもちろん健在。
96年生まれなのでそれなりの年だが堂々とした若々しい歩様を見せ、時折大暴れ。三白眼で人間たちを睨みまくるのもご愛嬌。

 
 

 昨年はあの二冠牝馬・テイエムオーシャンが交配相手に選ぶなど、良質な花嫁にも恵まれている。 外国から持ち込まれた産駒も重賞馬やオープン馬が出ているが、いよいよ今年、日本産の産駒がデビューする。







ストーミングホーム
(ミスタープロスペクター系:父マキャベリアン×母トライトゥキャッチミー/母父シャリーフダンサー)


 ダーレージャパンが自信を持って送り出す種牡馬。
マキャベリアンの後継種牡馬の一頭で、ゼニヤッタの父・ストリートクライ(海外で供用)と共に大きく扱っている。



 今回、はじめてじっくりと見た彼の5代血統表には驚かされた。 ミスタープロスペクターの2×3、ネイティブダンサーの4×5×5×5、ナタルマの4×4、アルマームードの5×5×5、ナスルーラの5×5と多数のクロスを持つ。 私は血統には明るくないのでわからないが、交配に何かしら影響は出ないものなのだろうか…?

 

 この馬に対するダーレーの自信は本当にすさまじいものがある。 ヨーロッパでの産駒55頭のうち38頭が勝ち上がった種牡馬としての実績。 それに自身が芝2000mG1・3勝しており、アメリカの硬めの芝で好成績をあげていることから日本への適性は高いとし、「この馬が成功しない訳がない」と断言する。
 その割に150万円とリーズナブルな価格設定は日高の生産者を相当意識しているのだろうか。

 

 ちなみにパレード中はいつも口をモゴモゴさせていたのか、撮れた写真はこんなのばっかり。







アドマイヤムーン
(ミスタープロスペクター系:父エンドスウィープ×母マイケイティーズ/母父サンデーサイレンス)


 2007年年度代表馬・40億円の満月もすっかり種牡馬らしくなった。ほっそりした現役時代から一変、どっしりとした重厚感と艶のある馬体がとてもきれいだ。
秋に会ったときは我関せず、的なクールな印象を見せていたムーンだが、大勢の人に驚いたのだろうか。入場を嫌がってまっすぐ歩かなかったり、少し暴れてみせる様子も。



 曾祖母・ケイティーズのラインからヒシアマゾンやスリープレスナイト、ダーレーが所有していた大井の2歳女王・ダガーズアラベスクなど、 名牝揃いの牝系出身という血筋の良さ、自身が残した素晴らしい成績から、昨年度は200回に迫る勢いの種付けを行った。
 種牡馬入り後、これまで交配された牝馬にはノースフライト、シンコウラブリイ、ウメノファイバー、ヤマニンシュクルなど、名前だけで目眩のしそうな名牝がずらりと並ぶ。 活躍馬を出すのはまちがいないだろう。

 


「頭が良すぎてソラを使う」と言われた知的な美形ぶりも健在。目が美しい馬だな、と思った。前髪は相変わらずだが。






ここからは新種牡馬3頭。オーストラリアのリーディングサイアー、アメリカのダート巧者、そして、おなじみの彼である。



コマンズ
(ダンジグ系:父デインヒル×母コテヒリハウス/母父マイスワニー)


 肩には南半球特有の焼印が目立つオーストラリアの4年連続リーディングサイアー。
デインヒル産駒である自身は目立った成績を残していないが、祖母がG1馬を5頭輩出した超・名繁殖牝馬エイトカラット。 血統の良さもあってか産駒は好成績をあげる。クイーンズランドオークス馬・パープルをはじめ、1100m〜2400mでG1馬が誕生するという万能の距離適性を持つ産駒は体質もかなりタフで故障に強いと言われる。 ガラスのサンデーサイレンス系が君臨する日本競馬界に一石を投じそうだ。



 オーストラリアとのシャトル供用となり、日本での種付け予定頭数は70頭。そのうち50頭超が殿下所有の繁殖牝馬のため、他牧場は15頭前後という少ない椅子を争うことになる。
ダーレージャパンでは最高の種付け料は500万円。とはいえ、社台系に比べると超高額という訳ではないし、もっと日本の牧場に開放されても…と思わなくはない。 殿下所有の優良牝馬たちで成績をあげる作戦だろうか。殿下の手腕に注目。



 肝心のコマンズ自身は数日前に検疫を終えたばかりで、少々お疲れ気味。お披露目、というには残念なコンディションだったのは気の毒なところ。 しかし、ゆったり歩く様は貫禄十分で、舌を出したりするチャーミングな一面も。

 

勝手に「気のいいおっちゃん」というイメージである。







パイロ
(シアトルスルー系:父プルピット×母ワイルドヴィジョン/母父ワイルドアゲイン)


 ダーレージャパン新種牡馬の一頭。 日本にはじめて導入されるプルピット産駒として注目される。プルピットはエーピーインディの後継種牡馬一番手。 日本に輸入された産駒としてはデアリングハートの半兄・ピットファイターがダート重賞3勝をあげている。
 5代血統表にノーザンダンサーが登場しないなど、日本では希少な血統はサンデーサイレンス系牝馬をターゲットにしているのが明確。 アメリカでの種牡馬入りを熱望されていたにも関わらず、殿下の「日本生産界に姿勢を示す」という意向により日本にやってきた。 すぐにたくさんの牝馬を集めるのは難しいかもしれないが、長期的視野をもって供用することで日本競馬界の系図を塗り替えるつもりか。

 

 アメリカのマイル路線で無類の強さを誇り、G1・フォアゴーステークスを始め重賞4勝。 現役引退して間もない5歳馬で、胸もおしりもプリプリの馬体は迫力十分。
「いい体をしているね!」「今回見た馬の中ではいちばん印象的。期待できそう」との声も。

 

 個人的には「小生意気なアメリカ少年」という印象。大きなつり目と外国人スタッフに甘える様子がそうさせたのだろうか。 「日本生産界に姿勢を示す」という重大な使命はどこへやら、という少年っぽさがちらりと見えた。とにかくかわいい。







ディープスカイ
(サンデーサイレンス系:父アグネスタキオン×母アビ/母父チーフズクラウン)


 スタリオンパレードのトリを飾ったのは栄光の日本ダービー馬。
ダーレージャパン唯一の華やかな栗毛や体高の高さから、遠目にもかなり大きく見える。 顔つきもあどけなさは残しつつ、ぐんと大人っぽくなった。充実期の5歳、現役なら…と思いを馳せずにはいられない。
 待機しているときは少しおどおどし、職員の後ろに隠れるような素振りも見せる。意外にも「臆病なところもある」という性格が見てとれた。

 

 しかし、いざお披露目となると一変。堂々とした歩様に会場は釘付け。やはり、現役を日本で過ごした馬の登場は盛り上がる。途中、興奮したのか尻っぱねもするがすぐに落ち着いた。

 
 

 5勝のうち4勝のパートナーだった四位騎手と。



 四位騎手が少し遠慮がちに距離を置くそばで、のんびりとした表情を見せる。競走馬と種牡馬の立場の違いを人間は感じるが、馬自身は変わらない。



ぼく、もうおうちもどりたい。


「サンデーサイレンス最良の後継種牡馬」とダーレーが位置づけるアグネスタキオンの牡馬最高傑作として期待が高まる。
 実は牝系もかなりの良血。母アビはケンタッキーダービー優勝牝馬・ウイニングカラーズ、ニューヨーク三冠牝馬・クリスエヴァートを輩出した名牝・ミスカーミーのクロスを持つ。 タップダンスシチーやリーチザクラウンは近親に当たるから、産駒の活躍はかなり期待できると個人的には思っている。希望的観測も込めて。
 パレード前には試験種付けも終わり、受胎が確認された。150頭前後の種付けを予定。スイープトウショウ、カワカミプリンセスといった名牝の名が交配相手の候補としてあがっている。
 浦河の小さな牧場に産まれた希望の星は、日高をふたたび明るく照らす太陽となるか。


なんだい、またへんなかおばっかりのせちゃってさ。


かっこよくしたらいいんでしょ。

 スタリオンパレードの後でもディープスカイは写真撮影の機会があったが、向こうに見える駐車場が気になっている様子。カメラには見向きもしなかった。



久々に大勢の人が集まるのを見て現役時代を思い出したのだろうか。結局、こちらを一度も向かないまま悠々と厩舎へ戻っていった。








以上でスタリオンパレードは終了。稚拙な写真しかなかったが、ほんの少しでも雰囲気が伝われば幸いである。



 苦戦の続く馬産地・日高を拠点に、存在感を増しつつあるダーレージャパン。
「日本の生産者を大切にしたい」という気持ちは、生産者サイドでもよく感じられるという。 「日本の競馬が淘汰される」と危惧しているファンもいるが、これから先どのような動きを見せていくのだろうか。
 社台一辺倒の日本競馬は、今のままでは先細りしていくしかないと私は思っている。競争がなければ成長は止まってしまう。
 だが、もはや地力だけではどうにもならないところまで日本競馬は成長しすぎてしまったようにも思う。 外から新しい刺激を与えなければいけない時期に来ているのではないか。ダーレーの存在が、日本競馬にとって起爆剤となることを祈っている。
 そして、この日お披露目されたスタリオンたちがすばらしい馬生を過ごせるようにしてほしいものだ。


 ほとんどの関係者が帰っていく中で、送迎バスの発車を待っていた私や一部の関係者が残って少しばかり雑談した。
 これまでどんな風に競馬と関わっていたかということや、これからの競馬のこと。 関係者の方からしたら「ただのファンがなにを言ってるんだ」と苦笑するような話をしていたかも知れない。

 けれど、ある生産者の方がつぶやいた、「こういうひとたちがいてくれるから競馬があるんだね」という言葉が印象に残っている。
 私も同じ気持ちだった。「あなたたちのおかげで競馬が見られるのだ」と。
 サラブレッドの生産は、馬券を買うよりはるかにギャンブルのはずだが、その仕事にたくさんの思いを込めているたくさんのひとがいる。 そのひとたちの力がなければ、数々のすばらしい名馬は生まれてこなかったのだ。 私たちはたくさんのひとたちの力で生み出された奇跡を見せてもらっているのだ。 と柄にもなく恥ずかしいことを思った。

 競馬そのものの売上が落ち続けている。「今が正念場だ」と多くの方が言っていた。 たくさんの困難がある中で、それでも奮闘する馬産地のためにも、ずっとずっと、競馬を見ていきたい。 そんな気持ちを強く強く持って、15時、ダーレーを後にした。



 こんな貴重な体験ができたことを改めて嬉しく思うし、この機会をくださった関係者の皆さんに感謝しています。
本当にありがとうございました。こんなに遅くなってしまいましたが、このレポートは皆さんへの感謝の気持ちを込めて。

 そして、ディープスカイ。彼のおかげで私は三度も北海道に飛んでしまい、たくさんの素敵な方々に出会うことができました。
 いろいろな方との縁をつないでくれる彼に御礼を言いたい。人間の言葉で申し訳ないけれど。

ありがとう。






おわり。


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